P--553 P--554 P--555 #1浄土和讃    浄土和讃 #2冠頭讃 (1) 弥陀の名号となへつつ  信心まことにうるひとは  憶念の心つねにして  仏恩報ずるおもひあり (2) 誓願不思議をうたがひて  御名を称する往生は  宮殿のうちに五百歳  むなしくすぐとぞときたまふ P--556 #2徳号列示 『讃阿弥陀仏偈』にいはく  曇鸞御造 南無阿弥陀仏[釈して『無量寿傍経』と名づく、讃めたてまつりてまた安養といふ。] 成仏よりこのかた十劫を歴たまへり、寿命まさに量りあることなし、法身の光 輪法界に遍じて、世の盲冥を照らしたまふ、かるがゆゑに頂礼したてまつる。 また1無量光と2真実明と号く、また3無辺光と4平等覚と号く、また5無 碍光と6難思議と号く、また7無対光と8畢竟依と号く、また9光炎王と10 大応供と号く、また11清浄光と号く、また12歓喜光と13大安慰と号く、 また14智慧光と号く、また15不断光と号く、また16難思光と号く、また 17無称光と号く、18超日月光と号けたてまつる。 19無等等 20広大会 21大心海 22無上尊 23平等力 24大心力 25無称仏 26婆伽婆 27講堂 28清浄大摂受 29不可思議尊 30道場樹 31真無量 32清浄楽 33本願功徳聚 34清浄勲 35功徳蔵 36無極尊 37南無不可思議光[以上略抄なり。] 『十住毘婆娑論』にいはく 自在人[我礼]清浄人[帰命]無量徳[称讃] 以上 Pb--557 #2讃弥陀偈讃 讃阿弥陀仏偈和讃          愚禿親鸞作 南無阿弥陀仏 (3) 弥陀成仏のこのかたは  いまに十劫をへたまへり  法身の光輪きはもなく  世の盲冥をてらすなり (4) 智慧の光明はかりなし  有量の諸相ことごとく  光暁かぶらぬものはなし  真実明に帰命せよ D-- (5) 解脱の光輪きはもなし  光触かぶるものはみな  有無をはなるとのべたまふ  平等覚に帰命せよ (6) 光雲無碍如虚空  一切の有碍にさはりなし  光沢かぶらぬものぞなき  難思議を帰命せよ (7) 清浄光明ならびなし  遇斯光のゆゑなれば  一切の業繋ものぞこりぬ  畢竟依を帰命せよ P--558 (8) 仏光照曜最第一  光炎王仏となづけたり  三塗の黒闇ひらくなり  大応供を帰命せよ (9) 道光明朗超絶せり  清浄光仏とまうすなり  ひとたび光照かぶるもの  業垢をのぞき解脱をう (10) 慈光はるかにかぶらしめ  ひかりのいたるところには  法喜をうとぞのべたまふ  大安慰を帰命せよ D-- (11) 無明の闇を破するゆゑ  智慧光仏となづけたり  一切諸仏三乗衆  ともに嘆誉したまへり (12) 光明てらしてたえざれば  不断光仏となづけたり  聞光力のゆゑなれば  心不断にて往生す (13) 仏光測量なきゆゑに  難思光仏となづけたり  諸仏は往生嘆じつつ  弥陀の功徳を称せしむ P--559 (14) 神光の離相をとかざれば  無称光仏となづけたり  因光成仏のひかりをば  諸仏の嘆ずるところなり (15) 光明月日に勝過して  超日月光となづけたり  釈迦嘆じてなほつきず  無等等を帰命せよ (16) 弥陀初会の聖衆は  算数のおよぶことぞなき  浄土をねがはんひとはみな  広大会を帰命せよ D-- (17) 安楽無量の大菩薩  一生補処にいたるなり  普賢の徳に帰してこそ  穢国にかならず化するなれ (18) 十方衆生のためにとて  如来の法蔵あつめてぞ  本願弘誓に帰せしむる  大心海を帰命せよ (19) 観音・勢至もろともに  慈光世界を照曜し  有縁を度してしばらくも  休息あることなかりけり P--560 (20) 安楽浄土にいたるひと  五濁悪世にかへりては  釈迦牟尼仏のごとくにて  利益衆生はきはもなし (21) 神力自在なることは  測量すべきことぞなき  不思議の徳をあつめたり  無上尊を帰命せよ (22) 安楽声聞・菩薩衆  人・天智慧ほがらかに  身相荘厳みなおなじ  他方に順じて名をつらぬ D-- (23) 顔容端正たぐひなし  精微妙躯非人天  虚無之身無極体  平等力を帰命せよ (24) 安楽国をねがふひと  正定聚にこそ住すなれ  邪定・不定聚くにになし  諸仏讃嘆したまへり (25) 十方諸有の衆生は  阿弥陀至徳の御名をきき  真実信心いたりなば  おほきに所聞を慶喜せん P--561 (26) 若不生者のちかひゆゑ  信楽まことにときいたり  一念慶喜するひとは  往生かならずさだまりぬ (27) 安楽仏土の依正は  法蔵願力のなせるなり  天上天下にたぐひなし  大心力を帰命せよ (28) 安楽国土の荘厳は  釈迦無碍のみことにて  とくともつきじとのべたまふ  無称仏を帰命せよ D-- (29) 已今当の往生は  この土の衆生のみならず  十方仏土よりきたる  無量無数不可計なり (30) 阿弥陀仏の御名をきき  歓喜讃仰せしむれば  功徳の宝を具足して  一念大利無上なり (31) たとひ大千世界に  みてらん火をもすぎゆきて  仏の御名をきくひとは  ながく不退にかなふなり P--562 (32) 神力無極の阿弥陀は  無量の諸仏ほめたまふ  東方恒沙の仏国より  無数の菩薩ゆきたまふ (33) 自余の九方の仏国も  菩薩の往覲みなおなじ  釈迦牟尼如来偈をときて  無量の功徳をほめたまふ (34) 十方の無量菩薩衆  徳本うゑんためにとて  恭敬をいたし歌嘆す  みなひと婆伽婆を帰命せよ D-- (35) 七宝講堂道場樹  方便化身の浄土なり  十方来生きはもなし  講堂道場礼すべし (36) 妙土広大超数限  本願荘厳よりおこる  清浄大摂受に  稽首帰命せしむべし (37) 自利利他円満して  帰命方便巧荘厳  こころもことばもたえたれば  不可思議尊を帰命せよ P--563 (38) 神力本願及満足  明了堅固究竟願  慈悲方便不思議なり  真無量を帰命せよ (39) 宝林・宝樹微妙音  自然清和の伎楽にて  哀婉雅亮すぐれたり  清浄楽を帰命せよ (40) 七宝樹林くににみつ  光耀たがひにかがやけり  華菓枝葉またおなじ  本願功徳聚を帰命せよ D-- (41) 清風宝樹をふくときは  いつつの音声いだしつつ  宮商和して自然なり  清浄勲を礼すべし (42) 一々のはなのなかよりは  三十六百千億の  光明てらしてほがらかに  いたらぬところはさらになし (43) 一々のはなのなかよりは  三十六百千億の  仏身もひかりもひとしくて  相好金山のごとくなり P--564 (44) 相好ごとに百千の  ひかりを十方にはなちてぞ  つねに妙法ときひろめ  衆生を仏道にいらしむる (45) 七宝の宝池いさぎよく  八功徳水みちみてり  無漏の依果不思議なり  功徳蔵を帰命せよ (46) 三塗苦難ながくとぢ  但有自然快楽音  このゆゑ安楽となづけたり  無極尊を帰命せよ D-- (47) 十方三世の無量慧  おなじく一如に乗じてぞ  二智円満道平等  摂化随縁不思議なり (48) 弥陀の浄土に帰しぬれば  すなはち諸仏に帰するなり  一心をもちて一仏を  ほむるは無碍人をほむるなり (49) 信心歓喜慶所聞  乃曁一念至心者  南無不可思議光仏  頭面に礼したてまつれ P--565 (50) 仏慧功徳をほめしめて  十方の有縁にきかしめん  信心すでにえんひとは  つねに仏恩報ずべし    以上四十八首 [愚禿親鸞作] 阿弥陀如来  {観世音菩薩 大勢至菩薩} 釈迦牟尼如来  {富楼那尊者 大目&M020078;連 阿難尊者} 頻婆娑羅王  {韋提夫人 耆婆大臣 月光大臣} 提婆尊者  {阿闍世王 雨行大臣 守門者} D-- #2大経讃 浄土和讃  愚禿親鸞作 『大経』意  二十二首 (51) 尊者阿難座よりたち  世尊の威光を瞻仰し  生希有心とおどろかし  未曾見とぞあやしみし (52) 如来の光瑞希有にして  阿難はなはだこころよく  如是之義ととへりしに  出世の本意あらはせり P--566 (53) 大寂定にいりたまひ  如来の光顔たへにして  阿難の慧見をみそなはし  問斯慧義とほめたまふ (54) 如来興世の本意には  本願真実ひらきてぞ  難値難見とときたまひ  猶霊瑞華としめしける (55) 弥陀成仏のこのかたは  いまに十劫とときたれど  塵点久遠劫よりも  ひさしき仏とみえたまふ D-- (56) 南無不可思議光仏  饒王仏のみもとにて  十方浄土のなかよりぞ  本願選択摂取する (57) 無碍光仏のひかりには  清浄・歓喜・智慧光  その徳不可思議にして  十方諸有を利益せり (58) 至心・信楽・欲生と  十方諸有をすすめてぞ  不思議の誓願あらはして  真実報土の因とする P--567 (59) 真実信心うるひとは  すなはち定聚のかずにいる  不退のくらゐにいりぬれば  かならず滅度にいたらしむ (60) 弥陀の大悲ふかければ  仏智の不思議をあらはして  変成男子の願をたて  女人成仏ちかひたり (61) 至心・発願・欲生と  十方衆生を方便し  衆善の仮門ひらきてぞ  現其人前と願じける D-- (62) 臨終現前の願により  釈迦は諸善をことごとく  『観経』一部にあらはして  定散諸機をすすめけり (63) 諸善万行ことごとく  至心発願せるゆゑに  往生浄土の方便の  善とならぬはなかりけり (64) 至心・回向・欲生と  十方衆生を方便し  名号の真門ひらきてぞ  不果遂者と願じける P--568 (65) 果遂の願によりてこそ  釈迦は善本・徳本を  『弥陀経』にあらはして  一乗の機をすすめける (66) 定散自力の称名は  果遂のちかひに帰してこそ  をしへざれども自然に  真如の門に転入する (67) 安楽浄土をねがひつつ  他力の信をえぬひとは  仏智不思議をうたがひて  辺地・懈慢にとまるなり D-- (68) 如来の興世にあひがたく  諸仏の経道ききがたし  菩薩の勝法きくことも  無量劫にもまれらなり (69) 善知識にあふことも  をしふることもまたかたし  よくきくこともかたければ  信ずることもなほかたし (70) 一代諸教の信よりも  弘願の信楽なほかたし  難中之難とときたまひ  無過此難とのべたまふ P--569 (71) 念仏成仏これ真宗  万行諸善これ仮門  権実真仮をわかずして  自然の浄土をえぞしらぬ (72) 聖道権仮の方便に  衆生ひさしくとどまりて  諸有に流転の身とぞなる  悲願の一乗帰命せよ    以上『大経』意 #2観経讃 『観経』意     九首 D-- (73) 恩徳広大釈迦如来  韋提夫人に勅してぞ  光台現国のそのなかに  安楽世界をえらばしむ (74) 頻婆娑羅王勅せしめ  宿因その期をまたずして  仙人殺害のむくひには  七重のむろにとぢられき (75) 阿闍世王は瞋怒して  我母是賊としめしてぞ  無道に母を害せんと  つるぎをぬきてむかひける P--570 (76) 耆婆・月光ねんごろに  是旃陀羅とはぢしめて  不宜住此と奏してぞ  闍王の逆心いさめける (77) 耆婆大臣おさへてぞ  却行而退せしめつつ  闍王つるぎをすてしめて  韋提をみやに禁じける (78) 弥陀・釈迦方便して  阿難・目連・富楼那・韋提  達多・闍王・頻婆娑羅  耆婆・月光・行雨等 D-- (79) 大聖おのおのもろともに  凡愚底下のつみひとを  逆悪もらさぬ誓願に  方便引入せしめけり (80) 釈迦韋提方便して  浄土の機縁熟すれば  雨行大臣証として  闍王逆悪興ぜしむ (81) 定散諸機各別の  自力の三心ひるがへし  如来利他の信心に  通入せんとねがふべし P--571    以上『観経』意 #2弥陀経讃 『弥陀経』意   五首 (82) 十方微塵世界の  念仏の衆生をみそなはし  摂取してすてざれば  阿弥陀となづけたてまつる (83) 恒沙塵数の如来は  万行の少善きらひつつ  名号不思議の信心を  ひとしくひとへにすすめしむ D-- (84) 十方恒沙の諸仏は  極難信ののりをとき  五濁悪世のためにとて  証誠護念せしめたり (85) 諸仏の護念証誠は  悲願成就のゆゑなれば  金剛心をえんひとは  弥陀の大恩報ずべし (86) 五濁悪時悪世界  濁悪邪見の衆生には  弥陀の名号あたへてぞ  恒沙の諸仏すすめたる P--572    以上『弥陀経』意 #2諸経讃 諸経のこころによりて 弥陀和讃    九首 (87) 無明の大夜をあはれみて  法身の光輪きはもなく  無碍光仏としめしてぞ  安養界に影現する (88) 久遠実成阿弥陀仏  五濁の凡愚をあはれみて  釈迦牟尼仏としめしてぞ  迦耶城には応現する D-- (89) 百千倶胝の劫をへて  百千倶胝のしたをいだし  したごと無量のこゑをして  弥陀をほめんになほつきじ (90) 大聖易往とときたまふ  浄土をうたがふ衆生をば  無眼人とぞなづけたる  無耳人とぞのべたまふ (91) 無上上は真解脱  真解脱は如来なり  真解脱にいたりてぞ  無愛無疑とはあらはるる P--573 (92) 平等心をうるときを  一子地となづけたり  一子地は仏性なり  安養にいたりてさとるべし (93) 如来すなはち涅槃なり  涅槃を仏性となづけたり  凡地にしてはさとられず  安養にいたりて証すべし (94) 信心よろこぶそのひとを  如来とひとしとときたまふ  大信心は仏性なり  仏性すなはち如来なり D-- (95) 衆生有碍のさとりにて  無碍の仏智をうたがへば  曾婆羅頻陀羅地獄にて  多劫衆苦にしづむなり    以上諸経意 #2現世利益讃 現世利益和讃   十五首 (96) 阿弥陀如来来化して  息災延命のためにとて  『金光明』の「寿量品」  ときおきたまへるみのりなり P--574 (97) 山家の伝教大師は  国土人民をあはれみて  七難消滅の誦文には  南無阿弥陀仏をとなふべし (98) 一切の功徳にすぐれたる  南無阿弥陀仏をとなふれば  三世の重障みなながら  かならず転じて軽微なり (99) 南無阿弥陀仏をとなふれば  この世の利益きはもなし  流転輪廻のつみきえて  定業中夭のぞこりぬ D-- (100) 南無阿弥陀仏をとなふれば  梵王・帝釈帰敬す  諸天善神ことごとく  よるひるつねにまもるなり (101) 南無阿弥陀仏をとなふれば  四天大王もろともに  よるひるつねにまもりつつ  よろづの悪鬼をちかづけず (102) 南無阿弥陀仏をとなふれば  堅牢地祇は尊敬す  かげとかたちとのごとくにて  よるひるつねにまもるなり P--575 (103) 南無阿弥陀仏をとなふれば  難陀・跋難大竜等  無量の竜神尊敬し  よるひるつねにまもるなり (104) 南無阿弥陀仏をとなふれば  炎魔法王尊敬す  五道の冥官みなともに  よるひるつねにまもるなり (105) 南無阿弥陀仏をとなふれば  他化天の大魔王  釈迦牟尼仏のみまへにて  まもらんとこそちかひしか D-- (106) 天神・地祇はことごとく  善鬼神となづけたり  これらの善神みなともに  念仏のひとをまもるなり (107) 願力不思議の信心は  大菩提心なりければ  天地にみてる悪鬼神  みなことごとくおそるなり (108) 南無阿弥陀仏をとなふれば  観音・勢至はもろともに  恒沙塵数の菩薩と  かげのごとくに身にそへり P--576 (109) 無碍光仏のひかりには  無数の阿弥陀ましまして  化仏おのおのことごとく  真実信心をまもるなり (110) 南無阿弥陀仏をとなふれば  十方無量の諸仏は  百重千重囲繞して  よろこびまもりたまふなり    以上現世利益 #2勢至讃 『首楞厳経』によりて大 勢至菩薩和讃したてま つる     八首 D-- (111) 勢至念仏円通して  五十二菩薩もろともに  すなはち座よりたたしめて  仏足頂礼せしめつつ (112) 教主世尊にまうさしむ  往昔恒河沙劫に  仏世にいでたまへりき  無量光とまうしけり (113) 十二の如来あひつぎて  十二劫をへたまへり  最後の如来をなづけてぞ  超日月光とまうしける P--577 (114) 超日月光この身には  念仏三昧をしへしむ  十方の如来は衆生を  一子のごとく憐念す (115) 子の母をおもふがごとくにて  衆生仏を憶すれば  現前当来とほからず  如来を拝見うたがはず (116) 染香人のその身には  香気あるがごとくなり  これをすなはちなづけてぞ  香光荘厳とまうすなる D-- (117) われもと因地にありしとき  念仏の心をもちてこそ  無生忍にはいりしかば  いまこの娑婆界にして (118) 念仏のひとを摂取して  浄土に帰せしむるなり  大勢至菩薩の  大恩ふかく報ずべし    以上大勢至菩薩 源空聖人御本地なり。